解説
中小企業のRPA導入事例まとめ- 業務別によくある型と、成功・失敗の分かれ目
AI社員総合センター 編集部
約7分で読めます監修: 高澤皆生

RPAの導入を検討するとき、多くの方がまず事例を探します。ただ、公開されている導入事例は大企業のものが目立ち、「自社のような規模でも使えるのか」が分かりにくいのが実情です。
本記事は、中小企業のRPA導入事例を「どの業務に・どう入れて・何が起きたか」という型に整理してまとめました。特定の企業名や製品の優劣ではなく、事例に共通するパターンを見ることで、自社に当てはめて考えられるようにしています。
RPAツールそのものの比較は「RPAツールの比較と選び方」、サーバー型・デスクトップ型・クラウド型の違いは「RPAの3種類の違いと選び方」、費用の内訳は「RPAの費用相場」で解説しています。本記事は事例の読み方に絞ります。
目次
事例の正しい読み方 - 会社名ではなく「業務の型」で見る
RPAの導入事例は、各ツール提供会社の公式サイトに数多く公開されています。読むときのコツは、会社名や業界の派手さではなく「どんな業務を・どのくらいの量で・誰が動かしているか」という型に注目することです。同じ業界でも業務の組み方は会社ごとに違い、逆に業界が違っても業務の型が同じなら、事例はそのまま参考になります。
もうひとつの注意点は、事例に書かれた削減時間の数字です。「年間で数百時間削減」といった数字は、その会社の業務量と手順の固定度で決まったもので、自社に同じ数字を持ち込むことはできません。参考にすべきは数字そのものではなく、「どの業務を選んだか」「どう小さく始めたか」「保守を誰が担っているか」という進め方の部分です。
以下では、公開されている中小企業の導入事例に繰り返し登場する型を、業務別に整理します。
事例は会社名ではなく業務の型で読む。削減時間の数字ではなく、業務の選び方と進め方を持ち帰る。
業務別によくある導入事例の型
中小企業の公開事例で最も多いのは、経理まわりの定型作業です。ネットバンキングから入出金明細をダウンロードして会計ソフトに取り込む、毎月の請求データを基幹システムから抽出して帳票にする、売上データを集計して報告用の表に転記する、といった「毎日・毎月決まって発生し、手順が固定された」作業が対象になっています。
次に多いのが受発注・販売管理です。ECサイトや受注システムから注文データを取り出して基幹システムへ登録する、在庫数を定期的に確認して発注リストを作る、出荷情報を配送会社のシステムに入力する、といった型です。件数が多く、深夜や早朝にも動かせることが効果につながっています。
営業事務・バックオフィスでは、日報や勤怠データの集計、名簿の更新、定型メールの送信、複数システム間の情報の突き合わせなどが定番です。情報システム部門では、アカウントの発行・停止、サーバーの死活確認、定期レポートの作成といった運用作業をRPAに任せる事例が見られます。
- 経理: 明細ダウンロード→会計ソフト取り込み、売上集計・転記、請求データの抽出・帳票化。
- 受発注: 注文データの基幹システム登録、在庫確認と発注リスト作成、出荷情報の入力。
- 営業事務: 日報・勤怠の集計、名簿更新、定型メール送信、システム間の突き合わせ。
- 情報システム: アカウント発行・停止、死活確認、定期レポート作成。
- 共通する条件: 毎日・毎月決まって発生し、手順が固定で、件数が多いこと。
各ツールの公式サイトには、こうした型の具体的な事例が多数掲載されています。代表的なRPAツールと公式サイトは「RPAツールの比較と選び方」に一覧でまとめていますので、自社に近い規模・業務の事例はそこから辿ってご確認ください。
成功事例に共通する3つの進め方
成果が出ている中小企業の事例には、規模や業界を問わず共通する進め方があります。第一に、対象を1つの業務に絞って始めていることです。「全社の定型業務をまとめて自動化」から入った事例はほとんどなく、最も件数が多く手順が固定された1業務を選び、効果を確かめてから広げています。
第二に、現場の担当者が作り方を覚えるか、直せる人を決めていることです。RPAは導入して終わりではなく、画面や帳票の様式が変わるたびに手直しが発生します。成功事例では「誰が直すか」が最初から決まっており、外部に作ってもらった場合でも、変更を依頼する窓口と手順が用意されています。
第三に、自動化の前に手順そのものを整理していることです。人によってやり方が違う業務をそのままロボットにすると、分岐だらけで壊れやすいシナリオになります。成功事例の多くは、RPA化の前に手順を1本に揃え、例外を洗い出しています。この整理の過程自体が業務改善になったという声も、事例には繰り返し登場します。
- 01対象を1業務に絞る件数が多く、手順が固定で、変更の少ない業務を1つ選びます。
- 02手順を1本に揃える人によるやり方の違いをなくし、例外を洗い出してから自動化します。
- 03小さく作って試す無料トライアル等で1シナリオを作り、止まりにくさを確かめます。
- 04保守の担当を決める様式が変わったとき誰が直すかを決めます。外部依頼なら変更の窓口を用意します。人が担う
- 05効果を測ってから広げる対象業務の所要時間を導入前後で比べ、安定してから次の業務に進みます。
失敗事例に共通するつまずき
一方で、導入したものの使われなくなった事例にも共通点があります。最も多いのは「様式の変更で止まり、直せる人がいない」というものです。取引先の帳票レイアウトが変わった、業務システムの画面が更新された、といった変化のたびにロボットが止まり、作った担当者が異動・退職していて誰も直せず、結局手作業に戻るという流れです。
次に多いのが、例外の多い業務を選んでしまったケースです。取引先ごとに書式が違う、手書きやFAXが混ざる、判断が必要な分岐が多い——こうした業務は、シナリオの分岐を作り込むほど壊れやすくなり、保守の手間が削減効果を上回ってしまいます。
失敗事例から学べるのは、RPAの成否は製品選びよりも「業務選びと保守体制」で決まるということです。事例を読むときも、成功した業務の型と同じくらい、その会社がどんな業務を対象から外したかに注目すると、自社での判断に役立ちます。
| 比較項目 | 成果が続いている事例 | 使われなくなった事例 |
|---|---|---|
| 対象業務 | 手順固定・件数多 (毎日・毎月決まって発生し、手順が1本に揃った業務から始めている) | 例外や判断の多い業務、手書き・FAXが混ざる業務を最初に選んでいる |
| 始め方 | 1業務から小さく (1シナリオを作って試し、効果を測ってから広げている) | 最初から多くの業務を対象にし、作り込みが追いつかない |
| 保守 | 直す人が決まっている (様式変更のとき誰が直すかが決まり、変更の窓口がある) | 作った人の異動・退職で誰も直せず、止まったまま手作業に戻る |
| 手順の整理 | 自動化の前に揃える (人によるやり方の違いをなくし、例外を洗い出してから作る) | 現状の手順をそのまま写し、分岐だらけの壊れやすいシナリオになる |
※公開されている導入事例・活用報告に共通して見られる傾向を一般化した整理です。個別の事例の成否は業務内容・体制により異なります。
事例の先にある課題 - RPAの外側に残る手作業
成功事例をよく読むと、自動化されたのは「決まった画面での決まった操作」であり、その手前の作業が人に残っていることが分かります。取引先ごとに書式が違う注文書や請求書を読み取る、表記の揺れる会社名を同じ取引先だと判定する、内容に応じて処理を振り分ける——こうした「形式が揃わない入力」と「例外の判断」は、RPAの得意領域の外側にあります。
当センターでは、特定の業務を役割として引き受けるAIを「AI社員」と呼んでおり、この外側の部分——読み取り・判定・突合——をAI社員が担い、決まった操作の反復をRPAが担う組み合わせを現実的な分担として整理しています。実際に、手書き混在の送り状を読み取って業務システムへ仕分ける事例や、FAXで届く依頼書の一次入力を自動化した事例では、形式の揃わない入力の処理が中心になっています。
RPAの導入事例を読んで「自社の業務は例外が多くて当てはまらない」と感じた場合は、RPAをあきらめるのではなく、例外と読み取りの部分をAIに任せる構成を検討する価値があります。詳しい比較は「AI社員とRPAの違い」で解説しています。
よくある質問(RPAの導入事例)
- 中小企業でもRPAの導入事例はありますか?
- あります。各ツール提供会社の公式サイトには、少人数の経理・受発注・営業事務での活用事例が多数公開されています。大企業の事例が目立ちますが、読むときは会社の規模より「業務の型」が自社と近いかで選ぶと参考になります。
- 事例にある削減時間は自社でも再現できますか?
- そのままは再現できません。削減時間はその会社の業務量と手順の固定度で決まった数字です。自社の効果は、対象業務にいま毎月何時間かかっているかから見積もります。考え方は「RPAの費用相場」で整理しています。
- 事例を参考にするとき、最初の業務はどう選べばよいですか?
- 成功事例に共通するのは「件数が多く、手順が固定で、変更が少ない」業務です。逆に、取引先ごとに書式が違う、手書きが混ざる、判断の分岐が多い業務は最初の対象に向きません。その領域はAIとの併用で扱う選択肢があります。
- 失敗事例から学ぶべきことは何ですか?
- 失敗の多くは製品選びではなく、業務選びと保守体制のつまずきです。様式変更で止まったとき誰が直すか、例外が出たとき誰が判断するかを導入前に決めておくことが、事例から得られる最大の教訓です。
まとめ
中小企業のRPA導入事例は、経理・受発注・営業事務・情報システムの定型業務に集中しており、成功例には「1業務に絞る」「手順を揃える」「保守の担当を決める」という共通の進め方があります。事例は会社名や削減時間の数字ではなく、業務の型と進め方を読み取るのが正しい使い方です。
そして、どの事例でも形式の揃わない入力と例外の判断はRPAの外側に残ります。この部分を人が担い続けるか、AIと組み合わせて解消するかまで含めて設計すると、事例の「その先」まで自社の計画に落とし込めます。
ツールの比較は「RPAツールの比較と選び方」、種類の違いは「RPAの3種類の違いと選び方」、費用は「RPAの費用相場」、AI社員との使い分けは「AI社員とRPAの違い」で、それぞれ詳しく解説しています。

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