解説
事務作業の効率化とは- 転記・入力・チェックに消える時間の分解と、やめる・揃える・任せるの進め方
AI社員総合センター 編集部
約5分で読めます監修: 高澤皆生

「事務作業を効率化したい」と感じるとき、実際に時間を奪っているのは、書類の内容を別のシステムへ写す転記、FAXやメールで届いた情報の入力、金額や数量が合っているかのチェック、月末の集計です。どれも1件ずつは数分でも、毎日積み重なると業務時間の大きな割合を占めます。
効率化というとツール選びから入りがちですが、順序が逆です。先にやるべきは「どの作業に、誰が、どれだけ時間を使っているか」の棚卸しで、その上で「やめる・揃える・任せる」の順に減らしていきます。
本記事では、事務作業のどこに時間が消えるのか、効率化の進め方、RPAとAIそれぞれに任せられる範囲、当センターの公開事例を整理します。業務効率化の全体像は「業務効率化とは」、経理・人事など部門別の効率化は「バックオフィスの効率化」に譲り、本記事は事務作業そのものに絞ります。
目次
事務作業の時間はどこに消えるのか - 転記・入力・チェック・集計
転記。紙の伝票や届いたメールの内容を、基幹システムや管理表へ写す作業です。注文書から受注システムへ、作業報告から日報の管理表へ。同じ情報を2回以上書いている状態は、ほぼすべて転記です。
入力。FAX・メール・電話・Webフォームなど、入口の違う情報をシステムに打ち込む作業です。入口ごとに書式が違うため、頭の中で読み替えながら入力することになり、担当者に知識が溜まって属人化します。
チェック。金額・数量・日付が元の書類と合っているか、注文と納品と請求が食い違っていないかを目で確認する作業です。件数が多いほど時間がかかり、疲れるほど見落としが増えるという性質があります。
集計。日次・月次で数字をまとめ、報告の形に整える作業です。締め日前に集中し、残業の原因になりやすい部分です。
- 同じ内容を紙とシステムの両方に書いている、または2つのシステムに入れている
- FAX・メール・電話で届いた情報を、人がシステムへ打ち直している
- 金額や数量の突き合わせを、目視のダブルチェックで担保している
- 月末・締め日前に事務の残業が集中する
- そのやり方を知っているのが特定の担当者だけになっている
ツールから入る効率化が失敗しやすい理由
効率化の相談で最も多いのは「何のツールを入れればよいか」ですが、ツールから入ると2つの壁に当たります。1つ目は、ツールの様式に業務を合わせる作業が新たに発生することです。入力フォーマットの作り直し、取引先への書式変更のお願い、現場への入力ルールの徹底。効率化のはずが、仕事が増える期間が先に来ます。
2つ目は、事務作業の入口が揃っていないことです。取引先ごとに注文書の様式が違う、手書きとExcelとPDFが混在している、という状態では、決まった形式を前提にするツールは力を発揮できません。実際には「ツールが悪い」のではなく、入口の揺れを人が吸収し続けてきた業務に、揺れを吸収できない道具を入れたことが原因です。
だからこそ、先に時間の棚卸しをして「どの作業が・どんな入口で・どれだけ揺れているか」を把握してから、道具を選ぶ順序が重要になります。
効率化の進め方 - やめる・揃える・任せるの順
- 01時間の棚卸し1〜2週間、事務作業を「転記・入力・チェック・集計」に分けて記録します。厳密でなくて構いません。どの作業が最も時間を食っているかの当たりを付けるのが目的です。
- 02やめる誰も見ていない報告書、二重になっている記録、慣習だけで続いている作業を廃止します。自動化より先に、そもそも要らない作業を消すほうが効果が大きく、費用もかかりません。
- 03揃える残った作業のうち、社内で完結する様式(日報・申請書・管理表)は形式を統一します。ただし取引先由来の書式(注文書・請求書)は揃えられないことが多く、ここは無理に変えません。
- 04任せる決まった操作の反復はRPAやシステム連携に、様式が揺れる読み取り・入力・突合はAIに任せます。取引先の書式を変えられない部分こそ、AIの担当範囲です。
- 05例外と判断は人が持つ読み取れないもの・判断が要るもの・取引先への確認は人が行います。全部を自動化しようとせず、人が確認と判断に集中できる形をゴールにします。人が担う
「やめる」「揃える」は今日から費用ゼロで始められます。「任せる」は対象を1業務に絞れば小さく試せます。
RPAとAI、どちらに任せるか - 揺れの有無で分ける
任せる道具は、対象の作業に「揺れ」があるかで分かれます。毎回同じ画面で同じ操作を繰り返す作業(システムAからBへの定型転記、決まったレポートのダウンロード)はRPAが得意です。ライセンス費用も比較的小さく、対象が明確なら早く効きます。
一方、手書きが混ざる、取引先ごとに様式が違う、内容を読んで振り分け先を判断する、といった揺れのある作業はRPAでは止まってしまいます。ここは書類を読み取り、内容を判断して処理するAIの担当範囲です。当センターでは、こうした特定の業務を役割として担うAIを「AI社員」と呼んでいます。
実務では両方を組み合わせる形が多くなります。入口の揺れをAIが吸収してデータを揃え、揃った後の定型操作をRPAやシステム連携が流す、という分担です。RPAとの違いの詳細は「AI社員とRPAの違い」で解説しています。
決まった操作の反復はRPA、様式が揺れる読み取り・判断はAI。取引先の書式を変えられない事務作業ほど、AIの出番になります。
公開事例 - 受注入力と請求突合の事務を、現場のやり方を変えずに自動化
物流・運送業の拠点(事務体制10名規模)では、電話・FAX・メール・SMSで届く大量の受注を事務担当が基幹システムへ手入力し、現場ごとの地図作成や車両条件の確認まで人手で行っていました。全チャネルの受注を読み取って基幹システムへ自動入力し、不足情報の確認や現場の下調べまで支援するAI社員を導入した結果、配車担当の残業は大幅に削減されています。
食品製造業(従業員50〜100名規模)では、取引先ごとに様式の異なる注文書・納品控え・出荷データを、経理担当者が1件ずつ目視で突き合わせていました。AI社員が読み取りと突合を自動化し、単価や数量の不一致だけを一覧で人に上げる体制に変えたことで、月末に集中していた照合作業は差異の確認だけになり、特定の担当者しか全体を把握できない属人化も解消しています。
どちらの事例にも共通するのは、取引先や現場の書式を一切変えずに始めている点です。詳細は導入事例ページに匿名で掲載しています。
よくある質問(事務作業の効率化)
- 事務作業の効率化は、何から始めればよいですか?
- ツール選びではなく時間の棚卸しからです。1〜2週間、作業を「転記・入力・チェック・集計」に分けて記録し、最も時間を食っている作業を特定してから、「やめる・揃える・任せる」の順で手を打ちます。廃止と統一は費用ゼロで今日から始められます。
- RPAとAI、どちらを入れるべきですか?
- 対象の作業に「揺れ」があるかで決まります。毎回同じ画面で同じ操作を繰り返す定型作業はRPA、手書きが混ざる・取引先ごとに様式が違う・内容を読んで判断が要る作業はAIが向きます。実務では、入口の揺れをAIが吸収し、揃った後の定型操作をRPAが流す併用が多くなります。
- 取引先の書式を変えてもらえない場合でも効率化できますか?
- できます。取引先由来の書式は無理に揃えず、様式の揺れごと読み取るAIに任せるのが現実的です。公開事例でも、取引先や現場の書き方を一切変えずに受注入力や請求突合を自動化しています。
まとめ - 棚卸しが先、ツールは後
事務作業の効率化は、転記・入力・チェック・集計のどこに時間が消えているかの棚卸しから始めます。進め方は「やめる・揃える・任せる」の順。廃止と統一を先に済ませ、残った作業を揺れの有無でRPAとAIに振り分けます。
取引先の書式を変えられない、手書きが混ざる、内容を読んで判断が要る。そうした揺れのある事務作業は、AI社員の担当範囲です。自社のどの業務から始めるべきかは、業務の一覧を眺めるより、締め日前に残業が集中している場所を見るのが早道です。
業務効率化の全体像は「業務効率化とは」、経理・総務など部門別の切り口は「バックオフィスの効率化」、データ入力に特化した解説は「データ入力・整備をAI社員に任せる」をご覧ください。

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