解説
社内申請・稟議・承認ワークフローの効率化・電子化- 工程分解と、ワークフローシステム・電子決裁・AI社員の使い分け
AI社員総合センター 編集部
約15分で読めます監修: 高澤皆生

稟議書を紙とハンコで部長、本部長、役員へ回すと、決裁まで何日もかかります。申請書の様式は部署ごとにばらばらで、書き方や添付の不備による差し戻しも起きます。いま誰のところで止まっているか分からず、催促のために席を立つ会社も少なくありません。
承認業務は、申請書を作り、関係者へ回し、承認または差し戻すという流れです。決裁された内容は台帳や会計、人事システムへ反映し、後から探せるように保管して集計します。一つひとつは当たり前の事務でも、申請の種類や承認者の数、月あたりの件数が増えるほど手間は積み上がります。
本記事はツールや業種に閉じず、社内申請や稟議、承認という業務そのものを主役に据えたハブ記事です。どこを電子化、自動化できるのか、手段はどう違うのか、どこから手を付けると効果が出るのかを整理します。総務業務全般、紙書類の電子化、法務業務、契約書のライフサイクル管理は、それぞれの専門記事へご案内します。
申請書を電子化して回せるようにすれば終わり、とはなりません。手間の多くは、申請内容を毎回ゼロから書き起こす作業と、不備による差し戻しのやり取りに残ります。過去の似た稟議や社内規程との突き合わせ、決裁後に台帳や基幹システムへ転記し直す作業も人手のままです。
ワークフローシステムは、申請と承認の経路化と進捗の見える化を担います。電子決裁や電子契約は、押印と署名を電子化します。AI社員は、申請の下書き、不備チェックや差し戻し理由の一次案、決裁後の転記や集計の下ごしらえを自社の手順どおりに巻き取ります。
目次
なぜ社内申請・稟議・承認業務は手間がかかるのか
承認ワークフローの負担が大きい会社では、申請を承認すること自体より、その前後にある『申請書を作る』『不備で差し戻す』『過去案件や規程と突き合わせる』『決裁後に転記する』といった事務作業に時間が溶けていることが多いものです。稟議・購買申請・経費・休暇・押印依頼・契約締結伺いなど申請の種類がいくつもあると、それぞれフォーマットも回付ルートも違い、申請者は毎回どの様式に何を書けばよいか迷い、承認者は届いた申請が規程に沿っているかを一件ずつ確かめなければなりません。紙やメール、表計算ファイルで回していると、今どこで止まっているのかが見えず、催促や確認の手間も積み重なります。
もう一つの構造的な問題は、差し戻しと再申請のやり取りです。添付書類の不足、金額や勘定科目の記載ミス、承認ルートの選び間違い——こうした不備は、承認者が気づいた時点で差し戻され、申請者が直して再提出し、また最初から回付し直す、という往復を生みます。一件ごとは小さくても、件数が多いほど、この差し戻しの往復が承認のリードタイムを押し上げ、現場と管理部門の双方の時間を奪います。さらに決裁が下りた後も、その内容を購買・会計・人事などのシステムや台帳へ手入力で反映する作業が残りがちです。
つまり社内申請・稟議は、『電子化して回せるようにする』だけでは完結しません。申請書をいかに正しく速く作り、不備による差し戻しをいかに減らし、過去案件や規程との突き合わせをいかに楽にし、決裁後の転記や集計をいかに仕組みに寄せて、承認者が『この申請を承認してよいか』という判断に集中できるようにするか——ここまで設計して初めて、ワークフローが単なる電子回覧ではなく、速くて記録の残る意思決定の仕組みになります。下のチェックリストは、承認業務の手間が重い会社で典型的に見られる症状です。
- 稟議書や各種申請書を紙・ハンコ、またはメールや表計算ファイルで回しており、決裁まで何日もかかる。
- 申請書のフォーマットや回付ルートが部署・申請種別ごとにバラバラで、申請者も承認者も迷う。
- 添付書類の不足や記載ミスで差し戻しが頻発し、再申請・再回付の往復に時間を取られている。
- 今この申請が誰のところで止まっているのかが見えず、催促や確認のために動いている。
- 過去の似た稟議や社内規程・決裁権限規程と突き合わせる確認が、承認者の経験と手作業に依存している。
- 決裁後に、内容を購買・会計・人事などのシステムや台帳へ手入力で転記し直している。
承認ワークフローの手間の多くは回付そのものではなく、申請書を毎回作り、不備で差し戻し、過去案件や規程と突き合わせ、決裁後に転記する事務が人手のまま残ることにある。
社内申請・稟議・承認業務の工程分解 - どこに手作業が残るか
社内申請・稟議・承認業務は、申請の種類や業種が違ってもよく似た工程に分解できます。おおむね、①申請書を作る(目的に合った様式を選び、内容・金額・添付書類をそろえて起票する)、②回す(決裁権限規程に沿った承認ルートで関係者へ回付する)、③承認・差し戻す(承認者が内容を確認し、承認または不備を指摘して差し戻す)、④反映・連携する(決裁内容を購買・会計・人事などのシステムや台帳へ反映する)、⑤保管・検索する(決裁済みの申請を後から探せるように記録・保管する)、⑥集計・分析する(申請の件数・金額・所要日数などを集計し、滞留やボトルネックを把握する)、という流れです。
このうち、ワークフローシステムの導入だけでは解決しにくく時間を使うのが、①の『申請書を作る』、③の『差し戻しのやり取り』、そして④の『決裁後の反映・連携』です。②の回付や⑤の保管・検索は電子化で大きく楽になりますが、申請内容を毎回ゼロから書き起こす作業、添付や記載の不備を見つけて差し戻し再申請する往復、過去の似た稟議や規程と突き合わせる確認、そして決裁後に別システムへ転記する作業は、件数が増えるほど人手が残ります。申請書、添付書類、過去の稟議、社内規程、基幹システムのマスタ——こうした形式の揺らぐ情報をつなぎ合わせて整え、内容を読み解く作業が、承認業務を圧迫します。
承認業務の定石は、全工程を一度に変えることではなく、手作業の負荷が大きい『申請内容の下書き』『添付・記載の不備チェックの一次案』『過去案件や規程との突き合わせ』『決裁後の転記・連携の下ごしらえ』『申請状況の集計レポートの下書き』から自動に寄せ、承認者の時間を『この申請を承認してよいか』という判断に振り向けることです。まずは『どの申請が、どのルートで回り、どこで差し戻しや滞留が発生し、決裁後にどこへ転記しているか』を見える化し、効果の大きい工程から切り出していきます。下のチェックリストは、自動化の検討対象になりやすい手作業の例です。
- 申請内容の下書き: 目的・金額・経緯などをもとに、いつもの様式に沿った稟議書・申請書の文面の下書きを作る(毎回ゼロから書いていた工程)。
- 添付・記載の不備チェックの一次案: 添付書類の不足、金額や勘定科目の記載ミス、承認ルートの選び間違いなどの候補を、提出前に洗い出す(最終確認は承認者・申請者が行う)。
- 過去案件・規程との突き合わせ: 似た過去の稟議や、決裁権限規程・社内ルールと照らし合わせ、参考になる前例や注意点を提示する(判断は承認者に残す工程)。
- 差し戻し理由のたたき台: 不備があった場合に、何をどう直せばよいかを分かりやすく整理した差し戻しコメントの案を作る(送信は承認者が確認のうえ行う)。
- 決裁後の転記・連携の下ごしらえ: 決裁内容を購買・会計・人事などのシステムや台帳へ反映するためのデータを整える(実際の登録・最終確認は担当者が行う)。
- 申請状況の集計レポートの下書き: 申請の件数・金額・所要日数・滞留状況などを集計し、ボトルネックを示した報告の下書きを作る(解釈と対策は人が行う)。
- 01申請書を作る目的に合った様式を選びます。内容・金額・添付書類をそろえて起票します。
- 02承認ルートで回す決裁権限規程に沿った承認ルートで関係者へ回付します。
- 03承認・差し戻す承認者が内容を確認します。不備があれば指摘して差し戻します。人が担う
- 04反映・連携する決裁内容を購買・会計・人事などのシステムや台帳へ反映します。
- 05保管・検索する決裁済みの申請を後から探せるように記録し保管します。
- 06集計・分析する件数・金額・所要日数を集計します。滞留やボトルネックを把握します。
手作業が残りやすいのは申請書作成・差し戻し・反映連携です。
承認ワークフローを支える手段 - ワークフローシステム・電子決裁・AI社員の役割の違い(実名は出典リンク方式・中立)
承認ワークフローを支える手段は、大きく分けて考えると整理しやすくなります。第一にワークフローシステム(申請・承認の経路化サービス)は、申請書を電子化し、決裁権限規程に沿った承認ルートで回付し、今どこで止まっているかを見える化して、決裁済みの記録を保管する『申請・承認を流す仕組み』です。第二に電子決裁/電子契約は、押印・署名を電子化し、社内の決裁や社外との契約締結を紙やハンコなしで完結させる『押印・署名を電子化する仕組み』です。ワークフローシステムと電子決裁/電子契約は連携して使われることも多く、それぞれ役割が異なります。
第三にAI社員は、生成AI・大規模言語モデルを中核に、申請書・添付書類・過去の稟議・社内規程・基幹システムのマスタといった『揺らぎのある情報源』から必要な情報を集めて構造化し、自社の手順どおりに申請内容の下書き・添付や記載の不備チェックの一次案づくり・過去案件や規程との突き合わせ・差し戻し理由のたたき台づくり・決裁後の転記やシステム連携の下ごしらえ・申請状況の集計レポートの下書きを行います。種類ごとに違う申請様式、添付書類の過不足、規程との整合性、決裁後の別システムへの転記——こうした、ルールを固定しきれない事務や読み解きの工程を、人の確認を挟みながら巻き取れるのが特徴です。とくに、不備による差し戻しを提出前に減らす一次案づくりは、承認のリードタイムを縮めやすい領域です。
三者は競合ではなく役割分担です。ワークフローシステムは『申請・承認を流す仕組み』、電子決裁/電子契約は『押印・署名を電子化する仕組み』、AI社員は『申請内容の下書き・不備チェックの一次案・過去案件や規程との突き合わせ・差し戻し理由のたたき台・決裁後の転記や連携の下ごしらえ・申請状況の集計レポートの下書き』を担います。下記の申請・承認に関わるサービスはいずれも実在の専用ツール・サービスであり、AI社員と組み合わせて使える前提で中立に挙げています。最新の機能・料金・対応範囲は必ず各社の公式情報でご確認ください(優劣を断定するものではありません)。なお、申請を承認してよいかという意思決定そのもの、規程の解釈、最終決裁は、承認者が行う前提で設計してください。
出典: 各サービスの公式ページ(機能の詳細・最新の料金・対応範囲は公式でご確認ください)。申請・承認ワークフローに関わる代表的なサービスの一例です。
- X-point Cloud(株式会社エイトレッド) ── クラウド型のワークフローシステム(公式表記)。申請書の電子化・承認経路の設定・回付を支援する。
- rakumo ワークフロー(rakumo株式会社) ── Google Workspace を拡張する電子決裁・承認システム(公式表記)。申請・承認の電子化を支援する。
- Gluegent Flow(サイオステクノロジー株式会社) ── クラウド型のワークフローサービス(公式表記)。各種申請・承認業務の電子化を支援する。
- クエステトラ(クエステトラ株式会社) ── クラウド型のノーコード・ワークフロー基盤(公式表記)。業務プロセスの設計・自動化を支援する。
- kintone(サイボウズ株式会社) ── 業務アプリを作成できるノーコード・ローコードのプラットフォーム(公式表記)。申請・承認アプリの作成にも用いられる。
| 比較項目 | AI社員 | ワークフローシステム・電子決裁/電子契約 |
|---|---|---|
| 得意とする領域 | 様式の差と内容を解釈 (申請様式・添付書類・過去の稟議・社内規程など形式の揺らぐ情報を読み解き、自社の手順で申請内容を下書きし、不備チェックや規程との突き合わせの一次案を作る) | ワークフローシステムは申請の電子化・承認経路の設定・回付・進捗の見える化を、電子決裁/電子契約は押印・署名の電子化を担う |
| 承認業務での主な役割 | 前後工程を仕組みへ (経路化された仕組みの入口に残る申請内容の下書き・不備チェックと、出口に残る決裁後の転記・連携の下ごしらえ・申請状況の集計レポートの下書きを巻き取り、人の確認を最小限にする) | 申請・承認を流す土台と、押印・署名を電子で完結させる土台を担う |
| 差し戻し・不備への効き方 | 提出前に不備を減らす (添付書類の不足・金額や勘定科目の記載ミス・承認ルートの選び間違いの候補を提出前に洗い出し、差し戻しの往復を減らす一次案を作る) | 決められた入力チェックや必須項目の制御に強い。様式をまたぐ内容の妥当性や規程との整合は人の確認が残りやすい |
| 決裁後の連携への効き方 | 転記の下ごしらえ (決裁内容を購買・会計・人事などのシステムや台帳へ反映するためのデータを自社のルールで整え、登録の下ごしらえを行う(最終登録は担当者)) | 連携機能やAPIを持つ製品もあるが、設定の範囲を超える転記や突き合わせは人手や個別開発が必要になりやすい |
| 費用(目安) | 業務量に応じた個別お見積もり (任せる業務範囲と量に応じて設計。申請の種類・件数・差し戻しの多さ・決裁後の連携の作り込みに合わせた調整がしやすい) | 利用人数・申請件数・機能・連携範囲などに応じた料金が一般的。無料から大規模まで幅がある |
※本比較は一般的な傾向に基づく整理です。ワークフローシステムは申請・承認を流すことに、電子決裁/電子契約は押印・署名の電子化に強みがあり、本記事はその価値を前提に、補完関係としてAI社員を位置づけています。各サービスの機能・料金・対応範囲は各社公式情報が最新です。承認の意思決定そのもの・規程の解釈・最終決裁は承認者が行う前提で設計してください。
隣接業務とあわせて進める - 個別業務記事へのご案内
承認ワークフローの効率化は、申請・承認の工程だけを切り離すより、その前後でつながる隣接業務とあわせて考えると効果が出やすくなります。総務が扱う各種申請をどう束ねるか、紙の申請書や決裁文書をどう電子化するか、契約締結の伺いや法務確認をどうつなぐか、契約書を締結後どう管理するか——この流れ全体を見渡したうえで、手作業の負荷が大きい申請の下書き・不備チェック・決裁後の転記から手を付けるのが現実的です。とくに、各種申請の取りまとめは総務業務と、紙書類の電子化はペーパーレス化と、契約締結伺いや審査は法務業務と、締結後の契約管理は契約管理(CLM)と、密接につながります。
ここでは概要にとどめ、各業務の典型フロー・できること・関連ツールとの役割の違い・始め方は、それぞれの専門記事で詳しく解説しています。社内の各種申請を総務目線で束ねたい場合は総務業務の記事を、紙の申請書・決裁文書を電子化したい場合はペーパーレス化の記事を、契約締結の伺いや法務確認をつなぎたい場合は法務業務の記事を、締結後の契約を管理したい場合は契約管理(CLM)の記事を、自社で最初に手を付けたい工程から個別記事を読み進めてみてください。
- 承認ワークフロー(タスク視点): 申請・回付・承認という業務を一つの仕事として任せる(承認ワークフローをAI社員に任せる記事)。
- 総務業務: 各種申請・備品・社内手続きを束ねる総務の自動化(総務業務の効率化・自動化の記事)。
- ペーパーレス化: 紙の申請書・決裁文書・押印書類の電子化(ペーパーレス化・書類電子化の記事)。
- 法務業務: 契約締結の伺い・社内審査・法務確認の自動化(法務業務の効率化・自動化の記事)。
- 契約管理(CLM): 締結後の契約書の期限・更新・台帳管理(契約管理・CLMの記事)。
- 経費精算: 経費申請の入力・チェック・承認(経費精算をAI社員に任せる記事)。
承認ワークフローの効率化の進め方 - どこから始めるか
承認ワークフローの効率化を始めるときは、いきなり全工程を変えようとするのではなく、手作業の負荷が大きく、判断の要素が少ない工程から自動に寄せるのが堅実です。多くの会社で最初の候補になるのは、申請内容の『下書き』と『添付・記載の不備チェックの一次案』、そして決裁後の『転記・連携の下ごしらえ』です。これらは、申請を承認してよいかという意思決定や、規程の最終的な解釈に直接は左右されないため、仕組みに寄せても判断を損ないにくく、承認者の時間を『承認の可否』を考えることへ振り向けやすくなります。
次に、ワークフローシステムは申請・承認を流す土台としてこれまで通り使い、電子決裁/電子契約は押印・署名の電子化に使いながら、その入口にある『申請の下書き・不備チェック』と、その出口にある『決裁後の転記・集計レポートの下書き』をAI社員に寄せる併用で検証します。承認までの所要日数、差し戻しの発生率、決裁後の転記にかかる時間、申請一件あたりの工数を導入前後で比較できるようにしておくと、効果を判断しやすくなります。安定したら対象範囲を広げ、より多くの申請種別や部署へと進めます。
判断の物差しは、ツールのライセンス費だけではなく『承認という一連の業務に、作成・差し戻し・転記の手作業がどれだけ食い込んでいるか』『決裁のリードタイムがどれだけ長く、ボトルネックがどこにあるか』です。稟議に何日もかかる、差し戻しが頻発する、決裁後の転記に時間が取られる、といった症状が強いほど、前後工程を自動化する価値が出やすくなります。料金や効果は申請の種類・件数・差し戻しの多さ・決裁後の連携の作り込みにより異なるため、固定額の前提ではなく業務量に応じた個別のお見積もりで検討するのが適切です。なお、承認の意思決定そのものや規程の解釈、最終決裁は、承認者が行う前提で進めてください。
- ステップ1: 承認業務の工程を棚卸しし、どの申請がどのルートで回り、どこで差し戻し・滞留が発生し、決裁後にどこへ転記しているかを見える化する。
- ステップ2: 手作業の負荷が大きく判断要素の少ない工程(申請の下書き・不備チェックの一次案・決裁後の転記の下ごしらえ)を選び、そこを自動に寄せる。承認の可否は人に残す。
- ステップ3: 承認までの所要日数・差し戻し発生率・決裁後の転記時間・申請一件あたりの工数を導入前後で比較し、対象を絞って小さく併用して検証する。
- ステップ4: 安定後に申請種別・部署へ対象を広げる。承認の意思決定・規程の解釈・最終決裁は人に残す設計を保つ。
よくある質問(FAQ)
- ワークフローシステムを入れれば、承認業務は楽になりますか?
- ワークフローシステムは、申請書の電子化・承認経路の設定・回付・進捗の見える化・保管を効率化する土台になりますが、その前後に残る『申請内容を毎回ゼロから書き起こす作業』『添付や記載の不備による差し戻しの往復』『過去案件や規程との突き合わせ』『決裁後に別システムへ転記する作業』は人手が残りがちです。手間の多くはこの前後工程にあり、ここをAI社員で巻き取り、ワークフローシステムと組み合わせると、申請から決裁までの速さと、差し戻しの少なさの両方を高めやすくなります。
- どの工程から自動化を進めると効果が出ますか?
- 手作業の負荷が大きく、判断の要素が少ない工程——申請内容の下書き、添付・記載の不備チェックの一次案、決裁後の転記・連携の下ごしらえ、申請状況の集計レポートの下書き——から自動に寄せるのが定石です。承認の可否や規程の最終的な解釈に直接は左右されないため、判断を損なわずに承認者の時間を『承認してよいか』を考えることへ振り向けやすくなります。
- 承認の判断までAIに任せて大丈夫ですか?
- AI社員が担うのは、申請内容の下書き、不備や規程との不整合の候補出し、過去の似た稟議の提示、差し戻し理由のたたき台づくりといった『判断の材料を整える一次案』までです。この申請を承認してよいか、規程をどう解釈するか、最終的に決裁するかどうかは、権限を持つ承認者が行う前提で設計します。判断材料を整えることで、承認者がより速く・確かに意思決定できる状態を作ることが役割です。
- RPAとAI社員はどちらが承認業務に向いていますか?
- 優劣ではなく役割が違います。RPAは決まった画面操作によるデータの転記・登録の反復に強く、AI社員は様式や添付がそろわない申請内容の読み解き・規程との突き合わせ・差し戻し理由の文面づくりに強みがあります。決裁後の定型的な転記はRPA、申請の下書きや不備チェック・規程の突き合わせはAI社員、というように組み合わせるのが効果的です。
- 紙やハンコの稟議が中心でも自動化できますか?
- 紙やハンコ中心の場合は、まずワークフローシステムや電子決裁で申請・承認を電子化する工程が前提になります。電子化した後に残る申請の下書き・不備チェック・規程との突き合わせ・決裁後の転記は、AI社員が引き受けられる領域です。紙書類の電子化の進め方はペーパーレス化の記事で詳しく解説しているので、紙が多い場合はあわせてご覧ください。
- 小さな会社や申請の件数が少なくても意味がありますか?
- 担当者が少ない会社ほど、申請の作成や承認者の確認、決裁後の転記が一人に集中しやすく、効果や安心感を感じやすい傾向があります。まずは差し戻しが多い申請や、転記の手間が大きい申請の下書き・不備チェックから小さく始めるのがおすすめです。
- 自動化すると承認業務の担当者の仕事はなくなりますか?
- なくなるというより、申請書の作成や差し戻し対応、決裁後の転記といった付帯作業から、承認の判断・規程やルールの整備・例外案件の調整といった人にしかできない仕事へ役割が移ります。AI社員は事務の下ごしらえと判断材料の一次案を担い、承認の意思決定は人が行います。付帯作業に取られていた時間を、ガバナンスと意思決定の質を高めることへ振り向けやすくなります。
結論
社内申請・稟議・承認ワークフローの効率化・電子化は、『申請書を電子化して回せるようにすれば終わり』ではなく、工程ごとに、どこに手作業が残り、何が業務を重くしているかを見極めることから始まります。手間の多くは、回付そのものよりも、申請内容を毎回ゼロから書き起こす作業、添付や記載の不備による差し戻しの往復、過去案件や規程との突き合わせ、そして決裁後に別システムへ転記し直す作業が人手のまま残ることにあります。
手段は競合しません。ワークフローシステムは申請・承認を流す仕組みを、電子決裁/電子契約は押印・署名を電子化する仕組みを、AI社員は申請内容の下書き・不備チェックの一次案・過去案件や規程との突き合わせ・差し戻し理由のたたき台・決裁後の転記や連携の下ごしらえ・申請状況の集計レポートの下書きを担います。すでにワークフローシステムや電子決裁を使っている会社こそ、『仕組みを入れても残った付帯作業』からAI社員を試し、承認業務を流れごと効率化する価値があります。
まずは手作業の負荷が大きい申請の下書きや不備チェック、決裁後の転記から、ワークフローシステムと併用しながら小さく自動化を検証してみてください。各種申請の取りまとめは総務業務の記事で、紙書類の電子化はペーパーレス化の記事で、契約締結の伺いや法務確認は法務業務の記事で、締結後の契約管理は契約管理(CLM)の記事で、費用の考え方は料金相場の記事で詳しく解説しています。なお、承認の意思決定そのものや規程の解釈、最終決裁は、必ず権限を持つ承認者が行う前提で進めてください。

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